日本顕微鏡歯科学会
2023年 第20回シーズンズ(ウインター)セミナー
発表者
Dr.南祥之
(月潟歯科クリニック)
Dr. 長谷部 裕子,Dr. 小栁 圭史,Dr. 小林 鷹,Dr. 塚本 真世,Dr. 濱田 康弘,Dr. 北村 和夫
(日本歯科大学病院総合診療科1)
Dr.滝野正義
(あすとら歯科クリニック相模原)
DH 藤井更紗
(Bivi歯科クリニック)
Dr.安岡大介
(ミライノデンタルクリニック)
Dr.春日太一
(新名主歯科 口腔外科医院)
Dr.長谷川洋子
(長谷川陽子デンタルクリニック)
Dr.別府優子
(べっぷゆうこ歯科 矯正クリニック)
Dr.岸祐矢
(神奈川歯科大学付属病院横浜クリニック)
Dr.岡口真由,Dr.長谷川達也,Dr.黒田恭平,Dr.大西小雪,Dr.北村和夫
(日本歯科大学附属病院 総合診療科1(歯内療法))
コメンテーター
小林平、菅原佳広、辻本恭久、長尾大輔、三橋晃、三橋純(五十音順、敬称略)
第20回シーズンズセミナー(ウインター)レポート
2023.12.3 寒さも深まった日曜日。
第20回日本顕微鏡歯科学会ウインターセミナーが開催された。
師走の忙しい日程にもかかわらず、参加者は会場34人、Web138人、計172名と大変に盛況であった。
演者は10名の先生が務められた。
第20回日本顕微鏡歯科学会ウインターセミナーが開催された。
師走の忙しい日程にもかかわらず、参加者は会場34人、Web138人、計172名と大変に盛況であった。
演者は10名の先生が務められた。
1人目 新潟月潟歯科勤務の南祥之先生
“ラバーダムシートをマトリックスとしてDeep margin elevation techniqueを行った1症例”先の大会で菅原先生が触れられていたDeep margin elevation techniqueとデジタル補綴を組合わせ、歯肉縁下マージンに対応し鉤歯の形態を再現し既存義歯を活かす患者さんに優しいケースであった。
光学印象にとって難しい歯肉縁下マージンへの対応は今後ますます必要になってくると思われる。
CRの研磨方法やプラーク付着をどの様に考えるか?などの質問も出ており予後を知りたくなるケースであった。
2人目 日本歯科大学附属病院勤務総合診療科の長谷部裕子先生
“根管上部と根管中央部の破折ファイル除去“について。破折したファイルの根管内での位置や長さから難易度と除去方法を考慮検討され、超音波チップによる除去とワイヤーループデバイスを用いて除去を行う方法を解説していただいた。
人生初のご発表とのことだが、しっかりとしたご発表だった。
3人目 あすとら歯科クリニック相模原ご開業の滝野正義先生
“マイクロスコープ治療におけるミラーテクニックとアシスタントワーク“マニュアルマイクロスコープ環境下で倍率とフォーカスを合わせ続ける治療の連続性を保つための細かな検証を行い、強拡大視野下でもフォーカスのあったで臼歯分岐部治療を示された。
これらを行う上で、”ピントが合う”見え方からアシスタントサイドに理解してもらうための工夫は圧巻であった。
4人目 本日唯一の衛生士発表 BiVi歯科クリニックの藤井更紗衛生士
“手術用顕微鏡を用いた根分岐部へのアプローチ方法“医院の紹介でも全てのスタッフがマイクロ使用という素晴らしい環境であった。
メンテナンス時に分岐部疾患に対し、患部を拡大視しワーキングビューで確実に処置を行えたらの技術的難易度は高いが、患者のメリットは計り知れない。
質疑のコメントでは、見えにくい歯肉溝内観察のためにエアーかける人が多いが気腫を生ずる危険性もあるため、吸引チップでの視野の確保と同時に触診も兼ねる方法をご紹介いただいた。
また、メンテナンスでは同じ患者さんを担当できると過去の映像などが残っていくので見返して診て行ける。
経過がどうなっていくのか、自分の足跡を見返し振り返ることが最も学びになるとのアドバイスで締められた。
5人目 ミライノデンタルクリニックの安岡大介先生
“歯科用実体顕微鏡だから出来る『魅せる』歯科診療~湿度計を用いた歯科治療のススメ~“湿度計を用いた1ケースを通した動画発表で、プレゼンを面白く作っていることに感銘を受けた。
湿度計の数値も含め、患者へ示すことで治療への付加価値を高めていくとのこと。
顕微鏡歯科ではラバーダム防湿法を行っている率は高いが、効果まで具体的に患者に説明している方は少ないと思う。少しの工夫で患者へラバーダムの意図が伝わるのならば良い工夫だと感じた。
コメンテーターの先生からは、認定医取得への具体的なアドバイスもあり充実したご発表だったのではないかと感じた。
6人目 新名主歯科・口腔外科医院の春日太一先生
"マイクロスコープに VR・AR を併用した症例と今後の展望“マイクロスコープの拡大視治療にVR・ARの仮想現実 拡張現実を組み合わせることで、更に治療品質の向上する。
症例の立体的な視覚化ができVR・ARによる事前学習や治療の疑似体験が可能になるとのこと。
指導医のレクチャーを仮想現実上で共有するほうが理解しやすく、指導医の経験値を視野の中で共有できるということは経験の浅いDrにとって非常に有益なことだろう。
これからが楽しみである。
7人目 長谷川陽子デンタルクリニックの長谷川洋子先生(リモート発表)
“マイクロだから出来る生活歯髄診断!!“生活歯の価値は非常に高く、顕微鏡歯科治療を始め生活歯髄温存療法を手がけている先生も多いことだろう。
筆者もそのうちの一人であるが、一例一例同じ歯は無く保存可能か不可能か判断に迷うことも多く、術後の結果に一喜一憂している。
今回の長谷川先生のご発表では非常にたくさんのケースをご紹介いただけた。
8人目 べっぷゆうこ歯科 矯正クリニックの別府優子先生(リモート発表)
“マイクロで可能になった歯髄温存療法“長谷川先生に続き生活歯髄のご発表だった。
別府先生はマイクロ導入から凡そ1年、活用し始めてから7〜8ヶ月でまだ初心者だとのことだが、顕微鏡拡大視野下での露髄面がしっかり見えるようになり、歯髄が残せる確率が上がったとのご報告だった。
コメンテーターの先生から歯髄保存の最後はどこかに運任せの部分もあるため、きちんと予後を見ていくことが重要と強調された。
9人目 神奈川歯科附属横浜クリニックの岸祐也先生
“侵襲性歯頸部外部吸収歯に対してマイクロスコープ下で外科的に処置し歯髄の温存を試みた症例"歯頚部吸収は、初期の段階での発見がなかなか難しい疾患のひとつではなかろうか?
また、発生した場所によっては処置や術式にも悩まされる。
発表ではマイクロスコープ下での外科処置でMTAセメントによる歯髄温存をお示しいただいた。
質疑応答も盛り上がり、来年の20回大会招待演者のシャノンパテル先生が歯頸部外部吸収のCT診断の大家とのことで非常に楽しみである。
10人目 日本歯科大学附属病院総合診療科の岡口真由先生
“3 症例から考察する上顎前歯部に対する外科的歯内療法のアプローチ“歯根端切除術は難治性根尖性疾患に対する保存的治療の最後の砦。
今回はタイトル通り、症例を供覧していただいた。
同じ前歯部とはいえ、病巣のサイズに対して切開線、フラップデザインや歯肉厚さ角化歯肉幅など考慮すべきことは各々異なる。
質疑応答では、摘出部との病理診断や骨窩洞から全て病巣が取れているのが確認できるか?など、コメントもあり非常に勉強になった。
なにより、これらのケースを行っているのが卒後2年目の先生ということに衝撃を受けた。
発表を終えて
最後に水川悟理事より、JAMD発足20周年となる来年の記念大会紹介で締め括られた。
シーズンズセミナーの主旨は、本大会にはまだ届かないケースや認定医を目指す為の相談ケースなど”ざっくばらんな会” という事だが、今回も本大会さながらの学びの多い会であり、しかも本当に若手の先生方が高度な処置に挑まれご発表されている姿に大変に感銘を受けた。
これも動画を共有し、ベテランの先生方から指導をいただいたり相談ができる顕微鏡歯科ならではのメリットであろう。
これも動画を共有し、ベテランの先生方から指導をいただいたり相談ができる顕微鏡歯科ならではのメリットであろう。
最後に運営の神田善姫先生、菅原佳弘先生、他準備にあたられた先生方、
配信スタッフの皆様に感謝申し上げます。
配信スタッフの皆様に感謝申し上げます。
(文責:下山歯科医院 下山泰明)
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