歯科医師になって以来、臨床ばかりをやっているが、患者と向き合えば必ず臨床上の悩みや疑問というものは出てくる。突き詰めれば突き詰めるほど、である。さらにうっかり開業なんかしてしまうと、今度は経営の悩みも出てくる。しかもそれを相談する相手がいない。解決できぬまま季節だけが過ぎて行く…。
数年前までの自分がそうだった。もちろん信頼出来て相談出来る先輩の先生がいない訳ではなかったが、すべての問題を解決できる訳でもない。
数年前にようやくの思いで歯科用実体顕微鏡を臨床に導入したが、それによってさらに悩ましくも楽しい臨床がその度合いを深めていったのである。これはいよいよ困った事態である。成書を開いても、文献を紐解いても答えが載ってない、こともある。誰かに聞きたい!こういう時どうすれば良いんだ?そんな思いで出向いたセミナーがこのシーズンズセミナーだった。とにかく各分野のエキスパートの先生方が集まる会なので、自分の取るに足らない疑問など雲散霧消するかの如く解決してくれる、そういう安心感を手に入れることができた。
前置きが少々長くなったが、2018年3月18日、穏やかな日差しに恵まれた日曜日、東京八重洲の地で記念すべき第10回目となるシーズンズセミナーが開催された。
今回の会場は東京駅からのアクセスも良く、各地から総勢48名の方々が集まり、セミナーとしては盛会だったように思う。
定刻となり、司会の水川先生が学会長の辻本先生にマイクを振ると、本セミナーの趣旨である「ざっくばらんな会」にという言葉が出て開会の辞となった。
そう、この会は学会の本大会とは別の独特な雰囲気がある。それは決して嫌な雰囲気ではなく、アットホームで「ざっくばらんな」居心地の良い雰囲気だ。
これまで様々な学会、勉強会、そしてセミナーに参加してきたが、中には少々排他的で、威圧感たっぷりな会もあった。
そういった会の主催者は確かに圧倒的な臨床知識や、スキルを持っているのだが、やはり後進を育てるにはそれだけでは足りない時代なのだ。
こちらの学会の先生方はそれを知っているのだろう、顕微鏡を手にしたばかり、右も左も分からない状態でもスッと入って行ける、そういう会であり、どんな些細な疑問や相談でも真剣に考えて真摯に答えてくれるし、顕微鏡を使おうとする姿勢を応援してくれるのである。
自分も前回のオータムセミナーで発表する機会を与えられ、それをどうにか乗り切る事が出来たのはひとえにこの会の懐の深さによるところが大きい。
それはともかく今回御発表された先生方は皆堂々としており、実に素晴らしかった。
各々顕微鏡の使用歴やテーマは違えども、顕微鏡の臨床使用を最適化するための悩みに共感したり、周辺環境の整備へのヒントなどなど内容も多彩で、聴いている方としてもまだ知らない知識を得たり、新しい気付きを得たりで充実したセミナーだった。
このセミナーに参加していつも思うのは、顕微鏡というひとつの医療機器を通してより良い医療とは何かを気軽にディスカッションするチャンスを与えてくれる貴重な場だということである。
それはここに集う先生方の、途中のプロセスが各々違うにせよ、最終的に目指す先が医療人としての良心に立脚した医療という共通項があるからに他ならない。
次回は本大会の後、サマーセミナーになるだろうか、開催が楽しみである。
最後にこの場を借りて本セミナーを企画、運営して下さった関係各位の先生方に感謝致します。
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